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地域安全学会論文集NO.40(電子ジャーナル論文)

No1
著者:

青田 良介

共著者:

本荘 雄一、張 勱

論文タイトル:

コロナ禍も見据えた中小規模の基礎自治体の災害対応力に関する考察

論文概要:

本研究では、コロナ禍での自然災害といった複合災害対策を見据え、基礎自治体の災害対応力に関し考察した。災害対応を考察する上で、基礎自治体の場合、国や広域自治体による支援といった外的要因と、基礎自治体そのものに内的要因の双方に配慮する必要がある。研究方策として、兵庫県内の市町を対象に、国や県による今般の支援策を分析した。次に、コロナ禍での災害対応に関するアンケート調査を行うとともに、一部市町に対するインタビュー調査も実施した。分析の結果、今般の国や県による支援策は主に避難所の開設・運営に焦点をあてたもので、丁寧なガイダンスや財源支援があれば、どの市町も概ね当座の対策に対処できることがわかった。他方、コロナ禍での本格的な災害対策を講じる上では、組織や計画といった危機管理体制や、庁舎や情報整備、住民や事業者等との連携を含む災害前の準備対策にも留意する必要がある。前者では市町の規模による差が生じた。後者では、規模に関わりなく、組織内の連携、共助との連携、ソフト整備に課題があることがわかった。国や広域自治体はこの点も踏まえた支援を講じる必要がある。


No2
著者:

荒川 俊也

共著者:

尾林, 史章 小林, 一信 板宮, 朋基 山邉, 茂之 宇野, 新太郎 鈴木, 高宏

論文タイトル:

津波避難訓練用シミュレータシステムの地域防災への試用と評価-「西尾市防災カレッジ」の体験を例として-

論文概要:

東日本大震災では,自動車と徒歩の混在状況を想定した津波避難訓練の重要性が指摘された.そこで,車中泊と徒歩での避難を想定した津波避難シミュレーションを開発し,「西尾市防災カレッジ」のイベントでデモンストレーションを行った.アンケートの結果,シミュレーションシステムは避難時の冷静な対処法を教えるのに有用であることがわかったが,コントローラーや操作系の改良,VR酔いの感情の軽減など,いくつかの課題があることがわかった.また,避難経路を十分に理解するためには,繰り返し体験することがより効果的であることも示唆された.


No3
著者:

滝井 裕樹

共著者:

立木, 茂雄 川見, 文紀 藤本, 慎也 牧, 紀男

論文タイトル:

住宅再建方法が生活復興感に与える影響について-2014・2015・2016・2017・2020年名取市現況調査パネル・データをもとに-

論文概要:

復興事業による住宅再建は個人で住宅再建する場合と比べて,被災者の主体的な再建を遅らせることから,被災者の生活復興感を低くしている可能性がある.しかし,本当に住宅再建の方法そのものが被災者の生活復興感を直接的に低下させているのだろうか.この問いに対して本研究の目的は次の2つとする.①住宅再建方法ごとの生活復興感の推移を検証する.②被災者の属性の違いを考慮した上で,住宅再建方法の違いが生活復興感を左右するのかを検討する.これら2つの分析を行うことで,復興事業が本当に被災者の生活復興感を下げる要因となっているのかを明らかにする.本研究では,「名取市被災者現況調査」の5年分のパネル・データを用いて,住宅再建方法ごとの生活復興感の比較をする.  分析の結果,目的に対して得られた知見は以下の通りである.①自力再建群と復興事業参加群は生活復興感が上がるとは言えないのに対して,復興公営住宅群は復興公営住宅に入居して数年後に生活復興感が低下している傾向がある. ②被災者の属性を考慮した上で,住宅再建方法ごとに生活復興感を比較すると,自力再建群と復興事業参加群は差があるとは言えないのに対して,復興公営住宅群は自力再建群,復興事業参加群と比べて,低いことが明らかになった.  したがって,被災後の生活復興感は,復興事業や住宅再建方法によって直接的に低下をするのではなく,被災者の属性に起因する.


No4
著者:

曽我部 哲人

共著者:

牧, 紀男 澤田, 雅浩

論文タイトル:

地震災害が地域人口に与える長期的影響の研究―2004年新潟県中越地震を対象として―

論文概要:

人口減少下・高齢化が進む地域では、災害によりその傾向が促進されるとされ、それを考慮した復興を目指す必要がある。しかし、地域特性や被害の大きさ、復興に向けた取り組みが長期的な人口にどの程度の影響を与えるかは明らかではなく、それらを明らかにすることは今後の巨大災害での復興事業を検討するために有効な知見となると考えられる。 以上の背景を踏まえ、本研究では平常時からの過疎化・高齢化が進む中山間地域が被災した2004年新潟県中越地震の被災地域である長岡都市圏を対象に、それらの要因と被災後の長期的人口動態との関係性を評価し、それを踏まえた将来の復興に向けた考察を行った。 分析に当たっては、国勢調査をもとに作成した地区別の地域居住者特性、震災による住家被害規模、復興支援員制度や復興基金事業といった集落再生事業の利用状況といった要素を各研究対象地域での説明変数として、2005年以降の国勢調査人口への影響の分析を行った。 その結果、特に人口減少傾向の地域特性を持つ地域において、被害の大きかった地域とそうでない地域との間で人口動態に違いが見られた。一方、復興に向けた取り組みとして着目した集落再生事業と人口増減の間には明確な関係性はほとんど得られなかった。この結果から、地域の長期的な人口動態を考える上では、地域特性に基づき、被害による人口減少の影響が長期的に残ることを念頭に置く必要性が示された。


No5
著者:

佐藤 史弥

共著者:

照本, 清峰

論文タイトル:

負傷の有無を考慮した津波避難場所の選択要因

論文概要:

本研究では,地域住民の津波避難に対する認識を示すとともに,負傷の有無による津波避難場所選考の違いを明示することを目的とした.そのために,和歌山県御坊市御坊地区において質問紙調査を行い,地域住民の津波リスク認識や避難意向等を把握し,負傷していない場合とした場合では,避難場所の選択意向が異なり,負傷した場合は自宅を避難先として選択する住民がいることを明らかにした.次に,避難場所選考に関するデータをもとに因子分析を行い,避難先選好の潜在因子として,「滞在環境の快適性」と「避難の安全性」の2つの因子を抽出すし,抽出した潜在因子を組み込んだ津波避難先選択の意思決定モデルを構築した.最後にパス解析を用いて,負傷していない場合に想定する避難先を投入したモデルと,負傷した場合に想定する避難先を投入したモデルの2つのモデルのパス図や標準化係数を比較することで,媒介変数も考慮した避難先の意思決定構造の違いを検討した.分析の結果,負傷した場合に自宅を避難先として選択する住民は,避難の安全性を重視していないこと,特に高齢者や家族構成の少ない世帯において,負傷した場合に自宅を避難先として選択する可能性があることが示唆された.


No6
著者:

寅屋敷 哲也

共著者:

紅谷, 昇平 生田, 英輔 渡辺, 研司

論文タイトル:

近畿圏の上場企業における防災・事業継続の体制と方法 -南海トラフ地震に備えた事前対策に着目して-

論文概要:

南海トラフ地震の発生により企業活動に影響が生じると考えられる近畿圏の上場企業において防災・事業継続の事前対策の体制と方法を明らかにすることを目的として、質問紙調査およびヒアリング調査を実施した。質問紙調査の結果、被災経験が有る企業の方が、南海トラフ地震の事前対策としての戦略・長期計画を策定している傾向があり、また、戦略・長期計画が有る企業の方が南海トラフ地震に対する進捗状況が進んでいるという傾向が明らかとなった。戦略・長期計画が有る企業に対して実施したヒアリング調査の結果、リスクマネジメントおよびBCPの策定・運用の体制、防災対策および事業継続対策の実施方法について整理した。その結果、被災経験の活用と、経営的関心の高い目的の取組と防災・事業継続の対策を連動させる方法を対策推進のために有用であると考察を行った。


No7
著者:

高原 耕平

共著者:

定池, 祐季 ゲルスタ, ユリア 奥堀, 亜紀子 小野寺, 豊

論文タイトル:

場所と物語のあいだ:「石巻アーカイブ」の地域活動における写真の〈ここ〉性

論文概要:

東日本大震災後、公的機関等により多数の震災デジタルアーカイブが立ち上げられた。他方、民間人による市民デジタルアーカイブも多数存在するが、そうした活動が被災地で果たしうる役割については研究されていない。そこで本稿はNPO「石巻アーカイブ」の活動を分析し、被災地の空間再編によって変容した記憶/物語と場所の関係を、市民デジタルアーカイブ活動が写真や地図を通じてケアしてゆくことを明らかにする。


No8
著者:

山根 由子

共著者:

齊藤, 知範 島田, 貴仁

論文タイトル:

電話機購入費補助金制度利用者における迷惑電話防止機能の利用状況の分析

論文概要:

特殊詐欺についての従来の研究では,高齢者の心理特性における脆弱性が明らかにされてきたが,詐欺電話がかかってくる固定電話機の脆弱性についての研究は比較的少なかった.本稿では,電話機購入費補助制度の利用者を対象とする調査データを用いて,迷惑電話防止機能の使用状況に関する分析を行い,以下の3つを明らかにした.第1に,親族や家電店店員が電話機の導入・設置をした人と,そうでない人とで,迷惑電話防止機能を有効にしている割合に統計的に有意な違いは見出されない.第2に,地域住民のソーシャルサポートを持つ人は,持たない人よりも,迷惑電話防止機能を有効にする傾向がある.第3に,迷惑電話防止機能を有効にした人は,有効にしていない人よりも迷惑電話防止機能を他の人に推奨する意向を持つ傾向がある.


No9
著者:

折橋 祐希

共著者:

柴原, 洋平 浦川, 豪

論文タイトル:

情報処理を組み込んだ災害対応実行計画策定研修プログラムの開発 ―生活再建支援業務を事例として―

論文概要:

本研究は,市町村職員が実施する災害対応業務の効率化を実現するための要素として計画に着目し、生活再建支援業務における計画策定のプロセスの確立と確立のためのツールとしてデザインした研修プログラムについて示すものである. 災害時は、被害の状況や資源の状況によって、事前に検討していたものとは異なる対応を求められる場合がある。そうした際に災害時に①「だれが」実行するのか、②何を目的とするのか、③どのように計画を実施するのかをまとめた災害対応実行計画が業務の効率化を図るためには重要である。対象としている生活再建支援業務は被災者の早期復興のために迅速な業務遂行が求められると同時に認定結果を住民に説明できる根拠が必要となり,「迅速性」と「公平性」が同時に求められる災害対応業務である。計画策定のプロセスは、被害状況を把握する、業務量を算出する、既存の資源量を鑑みて、実現可能な業務のやり方をシミュレーションする、複数の選択肢から判断するというプロセスにより行われることを示した。また、平常時から活用できる災害対応実行計画の策定プロセスを確立させるためのツールとして演習を位置づけた。確立を支援するためのツールとして、業務手法の検討に用いる「メソッドカード・メソッドシート」、資源を算出するための「資源シミュレーター」、「実行計画フォーム」の3つを開発した。演習はこれらを活用し、実務者参画のもと実施した。


No10
著者:

湯井 恵美子

共著者:

澤田, 雅浩

論文タイトル:

特別支援学校における事業継続への取り組みの実態解明 大阪府立支援学校に対する全数調査から

論文概要:

過去の災害教訓から,特別支援学校において,災害時に児童生徒と教職員のいのちと尊厳を守りつなぐためには,福祉,医療と教育の継続を十分に検討された学校事業継続計画(以下,学校BCP)が必要だと考える.大阪府内では水害等のハザード上にある支援学校が複数存在し,在籍する障がいのある幼児児童生徒を守るための丁寧な準備が必要である. そこで大阪府立支援学校46校を対象に,策定されている防災関連計画および,学校経営計画における防災への取り組みの方針や重要性を分析し,学校安全全般について特別支援学校の課題と優先業務の傾向を把握し,今後の特別支援学校の効果的な防災減災計画策定に必要な要素の抽出を試みた. 学校防災関連計画においては整いつつあり,学校経営計画においては,学校の安全安心を重要視する方針であることの確認ができた.策定にあたっての組織の在り方や運用についてはアンケート調査を行ったが,学校の安全安心には学校の所在自治体をはじめ地域との協力体制が必要だとの認識はあるものの,計画策定のための組織にPTA(保護者)や自治体職員など外部主体の参画や計画の配布など実際の活動が少なく,また,外部主体との協議の場がないなどの課題が明らかになった.今後、学校に保護者を巻き込む個別の教育支援計画の活用や地域を巻き込む地区防災計画といった児童生徒も教職員も,学校も地域も協働する取り組みが必要だと考える.


No11
著者:

中林 啓修

共著者:

論文タイトル:

令和元年東日本台風での災害派遣をめぐる自治体と自衛隊との連携に関する研究:派遣先自治体への質問紙調査を中心に

論文概要:

本稿は、令和元年東日本台風での自衛隊の災害派遣を題材に,検証レポートでの提言(「提案型」災害派遣)を踏まえた派遣の実情および,本事例での自治体と自衛隊との連携の課題を明らかにすることを目的とした質問紙調査の結果から、令和元年東日本台風での自衛隊の災害派遣をめぐる自治体と自衛隊との連携を論じた。調査結果から、東日本台風での災害派遣は以下6点に総括できた。①2週間以上の派遣を受けた自治体が70%を超えており、初動期から応急期にかけての派遣であった。②主な活動分野は、人命救助のほか、瓦礫処理や道路啓開、飲料水の給水支援そして入浴支援などであり、特に人命救助と瓦礫処理については自治体側の効果の実感が高かった。③自治体とは防災部局を通じた連携が主流であったが、人命救助や瓦礫処理については、多機関連携も図られていた。④自衛隊自身による情報発信を評価している自治体は全体の20%弱にとどまり、大部分の自治体は未把握もしくは評価不能と回答している。⑤「提案型」災害派遣については、初動期よりは応急期の活動に生かされており、提案を受けた自治体では、人命救助とならんで入浴支援や瓦礫処理が行われる傾向にあったほか、派遣期間も長期にわたる傾向があった。⑥今回の災害派遣での大きな課題は都県と市町村間の調整であり、特に市町村側の課題意識が強かったが、福島県のように比較的円滑に調整を進めた事例も見られた。


No12
著者:

田中 奈美

共著者:

沼田, 宗純

論文タイトル:

災害対応検証報告書におけるペットに関する課題分析を踏まえた組織別の災害対応業務フローの構築

論文概要:

本研究の目的は、主に自治体の防災担当部局による効果的かつ効率的なペットの災害対応を実現するために、過去の災害対応検証報告書のペットに関する課題分析を踏まえた組織別の災害対応プロセスを構築することである。はじめに災害対応検証報告書の分析を行い、ペットに関する課題の発生頻度を可視化し整理した。次に整理した過去の課題に対し、自治体の地域防災計画の記述を比較し、地域防災計画の記載の不足内容を明らかにした。最後に災害対応検証報告書の課題、地域防災計画や各種ガイドライン等に基づき災害対応工程管理システム(BOSS)を用いてペットに関連した災害対応業務フローの体系を構築した。


No13
著者:

千葉 啓広

共著者:

KURATA, Kazumi 新井, 伸夫 荒木, 裕子 静奈, 幸節 福和, 伸夫

論文タイトル:

広域大規模災害時の物資輸送の連携対応の確立に向けた検討過程の整理 -市町村境界を越えた3次緊急輸送道路の接続に向けた試み-

論文概要:

緊急輸送道路(以下,輸送道路)は,阪神・淡路大震災での教訓を踏まえて整備が進められてきた「災害直後から,避難・救助をはじめ,物資供給等の応急活動のために緊急車両の通行を確保すべき重要な路線」である.高速道路・自動車専用道路や一般国道,及びこれらを連絡する幹線的な道路を主な対象として全国に約10万kmが指定されている1).輸送道路の指定は主として都道府県や政令市が行い,1次,2次,3次の3つに区分される。但し,本研究が対象とする,愛知県をはじめとして,神奈川県や長野県などの複数の府県において,市町村が指定する緊急輸送道路をいわゆる第3次緊急輸送道路として位置づけている. この時の視点は,各市町村内の災害対応や緊急支援物資の輸送などを主として,それぞれの実情に合わせたきめ細かな指定ができる可能性がある.一方で,とくに広域大規模災害時を想定した場合,広域物資輸送や地域連携に基づく近隣を含めた市町村間による相互応援の視点も重要であるが,その視点が欠けている可能性がある. 本稿ではこうした現状の課題を共有するとともに,地域連携に基づく災害時の相互応援の実施を視野に,3次緊急輸送道路の指定のあり方や,市町村境界を越えた接続に向けた基礎自治体間の議論の場をケーススタディとして,地域連携の確立や具体化に向けた,議論のあり方や課題について,愛知県西三河地域を対象に検討するものである.