電子ジャーナル
地域安全学会論文集No.38(電子ジャーナル論文)2021.3
投稿日:2021年3月29日
著者: | 花田 悠磨 |
共著者: | MURAO, Osamu 寅屋敷, 哲也 杉安, 和也 佐藤, 翔輔 |
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論文概要: | 2011年東北地方太平洋沖地震に伴う津波により市町村庁舎が被災した地域では,多くの職員が命を落とし,行政上の拠点機能も失われ,災害直後の対応と復旧に関して多大な影響を受けた.本研究では,自治体庁舎の立地による津波リスクに焦点を当て,東日本大震災の被害に基づき庁舎の標高と海岸線からの距離による方法を提案し,全国の沿岸部市町村を4段階の危険度で評価した.また,大槌町,陸前高田市,南三陸町,女川町の事例分析により,災害直後に代替拠点が必要となる場合の機能に基づく空間配置について提案した. その結果,全国636沿岸市町村では最も危険度の高い(東日本大震災における津波で甚大な被害を受けた市町村庁舎と同様の立地条件を持つ)市町村は149であり,全体の約1/4であることがわかった.それらの自治体は庁舎が大きく被災して,使用不可能となる想定をしておく必要がある.その際は災害直後の自治体としての機能を維持できる公共施設をあらかじめ選定し,代替拠点として利用する際の想定を十分にしておく必要がある. |
著者: | 二宮 佳一 |
共著者: | 生田, 英輔 |
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論文概要: | 南海トラフ巨大地震が今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされており,被害が想定される地域では対策が急務となっている.対策の検討においては各地域の被災リスクや社会的特性,住民のリスク認知や避難意向が異なるため,客観的な根拠に基づいて地域の特徴や課題を把握し,実情に即した対策を模索する必要がある.そこで本研究では、地域の実情に即した津波避難対策の検討に資するべく,津波被災リスクの高い大阪市此花区を対象として住民意識調査を実施し,666名から回答を得た.回答の分析結果から住民のリスク認知や津波防災対策の実施状況,南海トラフ巨大地震発生時の想定を把握したうえで,共分散構造分析による意識構造モデルを構築して住民の災害に対する意識や津波避難の想定に影響を与える要因について考察した.意識構造モデルの構築を通して,津波防災対策の実施及び南海トラフ地震発生時の想定に関する要因を視覚的に把握することができ,各要因の影響の大きさについて明らかにすることができた.具体的には回答者属性や平常時のリスク認知が津波防災対策の実施や発災時の情報取得手段想定に影響を与えていたこと,平常時のリスク認知は世帯人数や住まいの階層といった回答者属性と比較して避難場所の想定に与える影響は限定的であることが示された. |
著者: | 北村 美和子 |
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論文概要: | 岩手県三陸沿岸部では過去から津波被害が繰り返されてきた.事前の津波に対する備えを行い,また,地震発生から津波到達まである程度の時間的な猶予があったにもかかわらず三陸沿岸部では甚大な人的被害があった.本研究は岩手県三陸沿岸部の大槌町の東日本大震災犠牲者回顧録「生きた証」を分析し,災害リスクの軽減を示唆するものである.「生きた証」の620人分の震災時の状況に関する記述に対してコーディング抽出し,カテゴリー化を行い、30のカテゴリーを作成した.30のカテゴリーと性別・世代別・地区別それぞれの区分との関連性を検証し、災害リスクの脆弱性を網羅的に抽出した.Disaster Pressue and Releaceモデル(PARモデル)災害リスク=ハザード×脆弱性を考察するため、大槌町のプレッシャーモデルにおける脆弱性の「根本的要因」「動的外圧」「安全ではない条件」を検討し、各要因の対策を記載したリリースモデルを考察して、大槌町のPARモデルを策定した。脆弱性を削減することが、災害リスクを軽減することにつながる。 |
著者: | 門倉 慧 |
共著者: | 梅本, 通孝 |
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論文概要: | 本研究では、被災地で行われる、生活必需ではないが被災者に励ましや癒やしなどを贈るために、コミュニケーションやパフォーマンス、体験を提供する活動を「励まし活動」とし、当活動が一体どのような活動であるかを明らかにするために活動の傾向を整理し、実態を把握することを目的としている。 東日本大震災の被災地の地域紙であるいわき民報を対象とした新聞記事調査を行い、いわき市で震災後1年間に行われた活動を収集した後、クロス集計やχ2検定を用いて傾向分析を行った。その結果、活動の会場、対象となる被災者、目的、活動ジャンル、活動の提供方法、被災者の反応などの活動の属性が明らかになった。更には今後傾向の一般化や効果、活動と被災者の適当な組み合わせを検討する際の参考として、属性の推移や活動ジャンル別の活動の傾向、避難者や子どもたちというような特徴的な被災者に対する活動の傾向、活動の提供方法別の反応の傾向が明らかになった。 |
著者: | 崔 青林 |
共著者: | 庄山, 紀久子 佐野, 浩彬 半田, 信之 花島, 誠人 臼田, 裕一郎 |
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論文概要: | 2019年台風15号の接近・通過に伴い,伊豆諸島や関東地方半部を中心に猛烈な風,雨となった。台風15号の影響で東京電力の管内の停電は,首都圏の広い範囲(特に,茨城県,千葉県,神奈川県,静岡県)に及んで被害の把握に時間がかかった。本研究では,Twitter情報を用いた台風15号による上記4県と東京都の停電状況把握を試みた。Twitter情報の解析結果から,千葉県(47),神奈川県(43),東京都(28),静岡県(19),茨城県(17)の計154市区町村は停電の可能性があると判定した。また,東京電力が公開する停電記録情報を基準とすれば,解析結果の正解率は73.1%でその有効性が示唆された。 |
著者: | 平木 繁 |
共著者: | 市古, 太郎 |
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論文概要: | 熊本地震時益城町と御船町では,行政からの委託により指定管理者である公益法人により避難所運営が行われた.本研究では,熊本地震時に指定管理者が避難所運営に関わった事例について,3自治体の避難所運営実態と指定管理者の運営方法を比較し,大規模災害時における避難所運営課題の把握を目的とする.研究対象指定管理施設は、熊本市の熊本県立総合体育館,益城町の益城町総合体育館,御船町の御船町スポーツセンターとする.対象施設の指定管理施設区分は全てリクリエーション・スポーツ施設である.東日本大震災と熊本地震における指定管理施設の避難所利用の課題を抽出し今後の課題と特徴を整理した. |
著者: | 本荘 雄一 |
共著者: | |
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論文概要: | 東日本大震災発生から9年が経過した,甚大な被害を受けた岩手,宮城両県の市町村における残された復興の課題の一つである地域経済回復に向けた戦略として,都市圏内の広域連携が提案されている.本研究の目的は,この被災都市圏の中心都市への集中的な政策注入が,被災都市圏全体の経済再生に効果的かつ効率的であるという仮説を,岩手県の釜石都市圏を対象地域として取りあげて,定量的に検証することである.また,検証結果を踏まえて,被災地経済再生のための広域連携の実装に向けた取り組みを提案することである.分析手法として,計量経済学的手法を採用して,多地域計量モデルを作成し,それを用いた政策シミュレーション分析を行う. |
著者: | 藤本 一雄 |
共著者: | 戸塚 唯、坂巻 哲 |
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論文概要: | 本研究では,東日本大震災での津波からの避難及び最近の風水害での避難に関する多数の体験談から,まず,避難の呼びかけ(説得)を拒否した事例を抽出し,理由ごとに分類する.その上で,拒否した理由ごとに,再度の説得により承諾を獲得した事例を抽出し,これらの結果を比較するとともに,既往の説得的コミュニケーション研究における承諾獲得方略に関する知見との比較を踏まえた上で,避難説得における承諾を獲得する方策を提言することを目的とする. |
著者: | 伊勢 正 |
共著者: | 臼田, 裕一郎 花島, 誠人 荒川, 逸人 |
論文タイトル: | 自然災害関係情報と原子力安全関係情報の統合管理に関する考察 ― 福島県における令和元年台風第19号の災害対応の事例より ― |
論文概要: | 防災科学技術研究所は、災害が発生した自治体(主に都道府県)において、様々な災害情報を集約するという情報支援活動を続けてきた。2019年台風19号災害の対応においては、初めて、自然災害と原子力安全の情報を統合管理したところ、原子力安全部門にとって有効な情報を提供することができた。全国の原子力発電所を擁する13道県へのアンケートで、自然災害部門と原子力安全部門の情報が統合管理されている道県は一つもないことを確認した。これにより、自然災害部門と原子力安全部門の情報を統合管理することで、自然災害関係の情報を高度に利用することが可能であることが示された。 |
著者: | 小田切 利栄 |
共著者: | Nakabayashi, Itsuki 三浦, 春菜 土屋, 依子 大平, 真弓 |
論文タイトル: | 災害対策組織における施策検討重視点と施策充実状況の関係に関する研究 ―基礎自治体の2016年度災害対策自己評価をもとにして― |
論文概要: | 基礎自治体の災害対策組織が災害対策施策検討時に重視する視点別に災害対策の充状況度を分析したところ、視点によって充実する施策の数、分類が異なることがわかった。課内の話し合いの積み重ねを重視する自治体群では充実している施策数と部門が多い。同視点で充実度に影響が見られない施策では、基本計画の重視、広域行政との協調、行政組織トップの方針を重視することで、充実する施策の段階と部門を補えることがわかった。 |
著者: | 大牟田 智佐子 |
共著者: | 室﨑, 益輝 澤田, 雅浩 |
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論文概要: | 災害時に電力や通信が途絶しても機能するラジオは重要な役割を担っている。 本研究では、全国民間放送連盟に加盟するラジオ局100社を対象にアンケート調査を実施した。その結果、ラジオは被災地にいる被災者に向けて情報を届けるメディアであり、災害時の放送は日常の放送と密接に関係していることがわかった。 また、先行研究で明らかになっている災害放送の4つの要素「防災放送」「被害報道」「安否放送」「生活情報」に加えて、リスナーとラジオ局をつなぐ「共感放送」がラジオの重要な役割であることが明らかになった。 |
著者: | 竹島 小一郎 |
共著者: | 鎌田, 亮 田中, 義朗 加藤, 孝明 |
論文タイトル: | 超短時間での津波到達が想定される地域における超小型モビリティ及びパーソナルモビリティに着目した避難手法の検討―沼津市戸田地区を対象に― |
論文概要: | 南海トラフ地震等では非常に短時間で津波が到達することが想定されている地域が存在し,高齢化の進展もあり避難が困難となっている.沼津市戸田地区において実施したビーコンとアンケートを用いた避難行動調査でも安全に避難が可能な水準の避難行動をとることが難しい結果となった.このような地域に対してどのようなアプローチが可能か本地域をモデルケースとして歩行者シミュレーションを用いてミクロスケールでの検証を行った.地域特性と照らし合わせながら対策案の比較検討を行った結果,近年普及が進む超小型モビリティやパーソナルモビリティの効果が期待されたため,ミクロ交通シミュレーションを行い津波避難における適切な利用方法の検討及び課題の抽出を行った.シミュレーションの結果,特に避難行動要支援者の避難完了率の改善に有効であるが,モビリティの利用量が一定を越えると歩行者との混在等を要因として混雑が発生し却って避難完了率が悪化することが判明した.また,避難場所の選択については浸水域外の平地への避難が最もモビリティの利用が有効であった.以上の結果から一定の運用ルールの下でモビリティを津波避難に導入することで全体への悪影響を回避しつつ避難が困難な避難者についても避難完了率の向上が可能であることが示唆された. |
著者: | 喜納 啓 |
共著者: | 佐土原, 聡 稲垣, 景子 矢代, 晴実 |
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論文概要: | 過去の震災では,甚大な人的被害に対して被災地域の救助隊のみでは対応が困難であり,被災地域外から多数の救助隊が応援に向かう「広域応援」が実施されたが,応援・受援体制の整備が不十分であり,救助活動が遅れたことが報告されている.現在,応援・受援体制の整備は進み,救助活動拠点を予め明確にするなど応援部隊を迅速に受け入れるための対策が検討されているものの,被災地域における人的被害量や消防力などを踏まえた応援部隊の派遣については,時間的・空間的視点から十分に議論されていない.よって本研究では,建物現況,道路状況,消防署・出張所の立地,消防隊員数などの地域特性を踏まえて,時間的・空間的な視点から,震災後の被災地域における救助活動状況を分析する手法を提案した.この手法を用いることで,公助の担い手が不足する地域を明らかとなり,震災直後の人命救助に重要な時間帯における緊急交通路の道路啓開・交通規制の優先ルートを選定することができた.本研究の成果は,震災直後の被害情報が錯綜する状況に備え,自治体が既に保有する地震被害想定などの情報を基に提案手法を活用することで,受援側が応援を必要とする可能性が高い地域を把握することができ,応援部隊の誘導調整,近隣に位置する消防署同士の連携,救助活動に必要な車両の燃料供給などを円滑に実施するための計画の具体化に寄与することが期待できる. |
著者: | 中島 美登子 |
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論文概要: | 本研究で取り上げる2つの防災集団移転地は住民構成という点ではそれほど大きな違いはない.しかし,これら2つの防災集団移転地のうち1つは移転当初から高台内に集会所が設置され,そこで一定のコミュニティ活動が行われてきたのに対し,もう1つは移転からかなり遅れてつい最近集会所が開設されたばかりである.以下では,まずこのような違いがどのように生み出されたのかを防集事業における移転プロセスと集会所の設置状況の検討を通して明らかにする.そのうえで,このような移転プロセスと集会所の設置状況の違いが防災集団移転地における高齢者を含む住民の交流状況や意識とどのように関係しているのかをアンケートとインタビューによって明らかにする.以上を通じて,本研究では防災集団移転地における集会所の役割や課題に関する基礎的知見を得ることを目的とする.本研究では防集事業における集会所の設置状況の違いに着目し,このような集会所の設置状況の違いが防災集団移転地における高齢者を含む住民の交流状況や意識とどのように関係しているのかを明らかにした.その結果,単純に集会所を設置すれば高齢者の交流が活発になるというものではなく,集会所の具体的な利用状況や地域活動との関連によって,集会所が高齢者の交流や意識におよぼす影響も大きく異なることが明らかとなった. |
著者: | 金 玟淑 |
共著者: | 上岡, 洋平 大月, 香穂 松原, 龍 谷本, 理恵子 |
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論文概要: | 本研究は,日本の一企業における新型コロナウィルス感染症に対する社内対応から見えてきた課題を抽出し,そのの改善策を見つけることで,今後の対策に資する教訓を得ることをその目的とする.研究の結果,次のような結論が出された.1)危機対応のプロセスなどは見える化した方が良い.2)事業所が各地域に分散されている場合は,全社向けのトップダウン指示だけでなく,対応スピードを上げるための現地対策本部を設置した方が望ましい.3)テレワークや出社調整等による勤務環境の急な変化に対しては,従来の連絡調整を見直すなり,対応する立場で迷いが生じないようマニュアル化が必要である. |
著者: | 高橋 幸宏 |
共著者: | 能島, 暢呂 |
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論文概要: | 内閣府に設置された「南海トラフの巨大地震モデル検討会」では,最大クラスの被害を引き起こす巨大地震の津波浸水深分布を11ケース想定している.津波解析の不確実性を考慮すると,津波断層モデルと浸水深分布との関連性を検討することは重要である.先行研究では,特異値分解によって浸水深の空間相関特性を評価している.特異値分解では直交基底によって各モードの空間相関を独立した成分として表現できる.一方,加法性が成り立つ非負諸量に関しては,非負基底の加算のみで近似表現する非負値行列因子分解(NMF)が有効性を発揮する場合がある.そこで本研究では,浸水深の空間分布特性をNMFで評価する.NMFの初期化手法として,一様乱数による手法と,特異値分解を基とした非負2重特異値分解(NNDSVD)による手法を採用した.11ケースの浸水深分布にNMF(初期化:乱数)では,いずれの基底も大すべり域に深く関連した基底となった.しかし,NMFの特長である結合係数のスパース性は高くない.一方,NMF(初期化:NNDSVD)では,基底1は領域全体をカバーする空間分布を表し,全ケースに寄与している.基底2以上は大すべり域に関連した基底であり,基底1による全体的な分布を基として,基底2以上で各ケースの浸水深分布を特徴付けている.また結合係数にスパース性が現れた.近似精度に関しては,初期化手法として乱数を用いた結果が優位であった. |
著者: | 山根 由子 |
共著者: | 小林, 寿一 島田, 貴仁 齊藤, 知範 |
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論文概要: | 防犯ボランティア団体の代表者を対象とした質問紙調査を実施し、977団体の代表者から回答が得られた。活動母体の違いで「自治会・商店会(n=591)」「警察協力団体(n=162)」「学校関係(n=78)」「各種団体・有志(n=146)」の4つに分類し、4群間で構成員数、活動方針、活動内容等の活動特性の差異と共通性を比較した。 |
著者: | 浅沼 直樹 |
共著者: | 梅本, 通孝 |
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論文概要: | 立地自治体に加え,周辺自治体を含めて再稼働の是非を判断する,全国でも異例の「茨城方式」を採用する東海第二原子力発電所を対象とし,立地自治体である東海村と,30km圏内にある周辺自治体のうち,県庁所在地がある水戸市,一部に「予防的防護措置を準備する区域」を含む日立市と那珂市で住民の情報行動やリスク認知がどのような傾向にあるかを調査した.各自治体内の地域的な広がりを確保するため,東海村と那珂市,水戸市の各地区の自治会の代表者に調査票を郵送または配布し,原子力に関する情報行動やリスク認知,防災知識,原子力政策に対する態度などを調べ,原子力発電所からの距離に着目しながら分析した.情報行動については発電所から5km圏内では,事業主体である日本原子力発電から直接発信する情報の閲覧頻度が高いが,それより離れると頻度が低下した.一方,15km前後を境にテレビや新聞というメディアからの間接的な情報の閲覧頻度が高まった.また,情報の信頼度が,「事故時に帰還できない」「大規模な自然災害時の対策」といったリスク認知や,「地球温暖化を防止できる」「地域の活性化につながる」といったベネフィット認知との関係が強く,特に日本原子力発電への信頼度との間に強い関係性が見られた.そしてリスク認知やベネフィット認知が原子力発電所の推進や維持,停止,廃炉など原子力政策への態度と有意な関係性が見られた. |
著者: | 櫻井 まゆ |
共著者: | 小山, 真紀 |
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論文概要: | 近年,我が国では毎年大きな水害が発生している.水防法が改定され,要配慮者利用施設における避難確保計画の策定が義務化となった.しかし,現状では,避難確保計画には,中小河川の浸水想定区域は考慮されていない.本研究では,中小河川を含む浸水想定区域を公開した岐阜県をモデル地域として,福祉施設の曝露率の比較を行った.その結果, 県全体では,13%の福祉施設が中小河川の浸水想定区域内にあることが分かった.特に中山間地において,該当している施設が多く存在することが分かり,中小河川の浸水想定区域 を考慮することの重要性が示唆された. |
著者: | 宇田川 真之 |
共著者: | 永松, 伸吾 |
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論文概要: | 被災自治体の支援のため,自治体独自の相互応援協定とともに,近年では,国等による各分野での全国的な枠組みの整備も進んでいる.2019年の台風第19号災害の際には,全国的な規模で地方自治体による多様な枠組みによる応援受援活動が行われた.しかし災害時の応援受援活動の状況は,分野ごとに報告されており,全体像は十分には明らかではない.そこで,全国の都道府県と市区町村を対象に,台風第19号災害時の応援受援活動に関するアンケート調査を行った.調査では,多様な枠組みによる各業務分野における応援受援の状況を,都道府県と市区町村,および応援側と受援側の両側面から設問した.そして運用された応援受援の枠組み,業務分野,派遣の規模や時期,派遣職員の役割等の状況を整理した.市区町村の応援受援活動では,自治体独自の相互応援協定等に基づく応援が多く,早期より行われるものの規模には限界があり,国等による全国的な枠組みに基づく応援が各業務分野で行われて補っていた.業務分野として被害認定調査は,都道府県,市区町村とも多くの団体が職員を派遣している一方で,水道や公衆衛生分野など,都道府県と市区町村では派遣割合が異なっていた.また近年,重要性の認識が高まっているマネジメント支援については,応援都道府県では派遣している団体の割合が高い一方で,市区町村からの派遣割合は低く,今後の人材育成の必要性を指摘した. |