電子ジャーナル
地域安全学会論文集 No.14 (2011.3)
投稿日:2013年8月30日
著者: | 生田 英輔 |
共著者: | 上西 亮,宮野 道雄,長嶋 文雄,梶原 浩一 |
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論文概要: | 阪神・淡路大震災の人的被害調査結果から重傷者は大腿骨骨折が典型的負傷形態であったことが判明している。大腿骨骨折は建物被害によっても発生するが、転倒した家具による骨折も多い。一方、地震時の被害は複合的に発生するため、地震後の調査によってもそのメカニズムの解明は難しい。そこで、実験的に地震時の家具転倒による負傷を明らかにし、定量的な評価を行う必要がある。本研究では、大腿部モデルの開発及びモデルへの家具転倒実験を行った。モデルの構築は、実際の人体を計測し、シリコンゴムと模擬骨を使用した。モデル内部には三軸加速度計を配置している。実験で得られた値から大腿骨骨折を生じさせる危険性を算出した。 |
著者: | 前田 紗季 |
共著者: | 小檜山 雅之 |
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論文概要: | 本研究では、耐震補強が避難に及ぼす効果を定量的に評価する新たな手法を提案した.まず,被験者実験を行い道路閉塞時の避難経路選択モデルの構築を行った.これをエージェントモデルに組み込み,補強すべき建物の優先順位を確率的に評価した.提案手法は,現実的な避難行動に即したモデルを用いており,より的確に耐震補強を優先すべき建物を提示できた. 本研究では、被害発生状況を確率的にとらえた耐震補強優先順位を単位時間当たりの避難人数の改善度合いとして定量的に評価する指標を提案した.また、この手法は震度6強のときの耐震補強について的確に示すことができている. |
著者: | 岡崎 豪 |
共著者: | 佐土原 聡,矢代 晴実,吉田 聡 |
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論文概要: | リスクマネジメントを導入している様々な組織は,費用便益分析により災害へのリスク対策を評価することが一般的となりつつある.しかし,従来の費用便益分析は損害額の期待値から便益を評価しており,緩和策が損害額の変動に及ぼす効果を考慮していない.そこで,期待値とValue at Risk (VaR)によって費用便益分析の評価式を導く手法を提案する.本手法により,最適な緩和策と保険を選定することが可能となるだけでなく,保険と緩和策を組み合わせたリスク対策の評価が可能となる. |
著者: | 松川 杏寧 |
共著者: | 立木 茂雄 |
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論文概要: | 本研究では,2007年度・2008年度の自治会・管理組合基本調査,2009年度一万人アンケートおよび放火・犯罪件数のデータを用いて,ソーシャルキャピタルと地域の安全・安心の因果関係を明らかにする.分析および考察の結果,ソーシャルキャピタルは5つのソーシャルキャピタル促進要因によって規定されること,地域のソーシャルキャピタルが地域の無作法性や実際の犯罪実績などの地域の安全・安心に対してどのような効果を持つのかという因果関係を明らかにし,立木(2007)および立木(2008)で提唱,再現された上記の因果関係モデルの安定性と一般性を実証した.またソーシャルキャピタルが直接,放火・犯罪件数を低減させる効果を有することが確認された. |
著者: | 竹内 慎一 |
共著者: | 高橋 章弘,南 慎一 |
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論文概要: | 本論では,北海道における集落の地域防災力の実態を分析するため,内閣府による集落孤立に関する自治体への調査結果から北海道の集落の特徴を整理し,分析対象とする事例集落を選定した。 次に自治体へ行った聞き取り調査や現地調査,集落孤立の経験者への聞き取り調査などから,事例集落の防災対策の現況や潜在的な防災力となる平常時の地域活動の実態を整理した。また,災害時の自治体対応の困難さや集落に想定される災害について自治体所有の資料などから分析を行った。 集落の実態分析を基に防災対策の検討課題を整理し,自治体が孤立集落対策を検討するための孤立に関わる災害危険度と地域防災力に関わる評価指標を示した。 |
著者: | 中村 仁 |
共著者: | 加藤 孝明 |
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論文概要: | 本研究の目的は,地震災害における自治体間の相対的な地域災害対応力を,汎用性の高いデータを用いた簡易な手法を用いて評価し,その意義と課題を明らかにすることである.新しく提案した地域災害対応力評価の指標は,地震時の被害状況と被害軽減のためにとるべき対策をイメージしやすい指標となっている.また,発災直後の地域災害対応力を考慮すると,災害対応を担う住民が不足する昼間の評価が低い自治体が多いことが示唆された. |
著者: | 石井 一徳 |
共著者: | 翠川 三郎,三浦 弘之 |
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論文概要: | 地震ハザードマップ作成のための基礎データとして、既往の250mメッシュ地形・地盤分類メッシュマップを高分解能衛星画像や数値標高モデルを用いて50mメッシュに細密化するための分類規則を作成した。トレーニングアリアにおいて、細密化の結果から正解とする50mメッシュマップをもとに誤答率を算出したところ、250mメッシュと比べて細密化された50mメッシュの方が誤答率が低くなる結果を得た。最後に作成した細密化のための分類規則を神奈川県東部に適用し、広域での50mメッシュマップを推定した。 |
著者: | 照本 清峰 |
共著者: | 越山 健治 |
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論文概要: | 本研究では,災害対応に関する研修プログラムを通じた人材育成における効果と課題について検討することを目的とする.研修プログラムでは,自然災害への対応能力を向上させることをねらいとして,高めたい能力項目及び知識項目を設定している.調査は,研修プログラムの受講者に対して,研修開始前,終了直後,研修終了から約3ヶ月後の計3度実施された.分析の結果,研修プログラムを通じた人材育成の効果として,能力項目と知識項目の向上効果が構造的に示されるとともに,受講者の業務への反映状況との関連性が把握された. |
著者: | 有馬 昌宏 |
共著者: | 西條 毅 |
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論文概要: | 地域社会の安全や安心を確立して維持するにあたり、情報通信技術の利活用の可能性や有効性が示され始めてきているが、本研究では空間情報を扱うことができる地理情報システムを利用して、既に公開可能な情報として収集されている感染症データを住民に公開することで、健康リスクへの対応という観点から地域社会の安全や安心の確立に寄与できないかを検討する。具体的には、即日に報告が保健所に上げられる学級閉鎖報告に注目し、学級閉鎖情報の即時の公開が地域住民の感染症の予防行動を喚起するトリガーとなりうるかどうか、またトリガーとなりうるのであれば、より効果の高い情報公開の方法は何かを、住民意識調査から探ることを試みた。 |
著者: | 楢府 龍雄 |
共著者: | 石山 祐二,今井 弘,安藤 尚一,田阪 昭彦,松崎 志津子,クリシュナ プリバディ,アモッド・マニ ディキシット,ナジブ アーマド,カイザル アリ,アーメット トゥレー |
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論文概要: | 甚大な人的な地震被害の主要な原因であるノンエンジニアド住宅は、工学技術者が関与して建設されるエンジニアド住宅とは大きく異なることから、本研究では両者の比較と、ノンエンジニアド住宅の特性の把握を行った。これから、ノンエンジニアド住宅の被害軽減のためには、現場で実施可能な耐震技術とその普及方策が必要であることがあきらかとなった。さらに、専門知識を有する住宅供給セクターが存在せず、ノンエンジニアド住宅の住民が低所得層であることに起因する様々な問題に対処するため、学際的、業際的、国際的なアプローチを提案するものである |
著者: | 浦川 豪 |
共著者: | 林 春男,大村 径,名和 裕司 |
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論文概要: | 災害発生後は,災害発生による被害状況,内部及び各関係機関の対応状況等を共有するために災害対策本部会議が開催される.本部会議では,被災地の被害や直面している課題等の最新情報が各班から報告され,対応方針を決定する.被災地自治体が質の高い災害対応を遂行するためには,各班から報告される情報の内容(質),その情報に基づく意志決定が最も重要となる. 本研究では,災害対策本部における地図活用に着目し,主題図を作成するために事前に検討すべきこと,現場での適用,応用等利用する方法を考慮した実装技術として主題図作成支援ツールを開発し,災害対策本部の実務者間,各関連機関との状況認識統一を支援することを目的とする. |
著者: | 吉森 和城 |
共著者: | 糸井川 栄一,梅本 通孝 |
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論文概要: | 本研究は,地震災害時に超高層集合住宅で起こりうる生活上の問題に対して,具体的な対策が進んでいない現状に問題意識を持ち,超高層集合住宅の居住者における家庭防災行動の促進要因,阻害要因について議論する.本研究における調査として,2棟の超高層集合住宅の居住者を対象とし,居住者の防災行動,地震リスク認知,日常の近所づきあいに関するアンケート調査を行っている。これらのアンケート調査を基に,共分散構造分析の手法を用い,家庭における防災行動の意識構造を明らかにした. |
著者: | 蛭間 芳樹 |
共著者: | 秦 康範,目黒 公郎,近藤 伸也 |
論文タイトル: | 新潟県庁の危機管理における環境適応と組織能力の「カイゼン」-2004年新潟県中越地震と2007年新潟県中越沖地震の事例から- |
論文概要: | 本稿の目的は,我が国の危機管理を主として担う組織である行政の実態を組織論の視点から分析・評価することである.まず,「Risk」と「Organization」をキーワードとした文献調査を実施し,既往研究について整理した.次に,新潟県を対象組織として,2004年新潟県中越地震における災害対応活動を分析した.また,新潟県は新潟県中越地震や同年の新潟豪雨を契機として地域防災計画を改訂したので,この改訂に伴う組織能力のカイゼンに関しても分析・評価を行い,カイゼン前後の組織構造や組織特性の変化を明らかにした. |
著者: | 藤岡 正樹 |
共著者: | 梶 秀樹,三平 洵 |
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論文概要: | 本論文は、昨年6月に筆者らが開発した、任天堂DSを使った地震防災教育用のゲームソフトウエアの開発過程とコンテンツの概要を紹介し、同様の試みを目指す諸氏の参考に供することを狙いとしている.論文では、本ソフトウエアの防災教育・研修上の機能についてその位置づけを示し、次いで、ゲーム形式の防災教育・訓練ツールの内、今日の防災教育・研修に最も必要とされる条件から開発コンセプトを抽出した.また、開発したツールを、小中学校の防災教育現場で実験的に使用し、生徒たちへのアンケート調査を基に、その反応から、本ツールの教育研修効果について定性的考察を行い、本ツールの効果的な利用に関する今後の方法を検討した. |
著者: | 青田 良介 |
共著者: | |
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論文概要: | 被災者の住宅・生活再建は大きな課題であるが,政府は私有財産の維持形成につながるものに対しては直接的に支援しないスタンスをとる.しかし,実際には多くの被災者が立ち直れないため, 地方自治体独自の支援策や復興基金,義援金を使って補完・拡充する施策が採られた.今日では国も被災者生活再建支援法の改正等を通して,使途を限定しない支援を行っている.本稿では,これまでの災害事例をもとに直接的支援の変遷を分析することにより,公的支援の課題や今後のあり方等を考察する. |