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地域安全学会論文集NO.42(電子ジャーナル論文)2023.3

No1
著者:

寅屋敷, 哲也

共著者:

論文タイトル:

南海トラフ地震の想定被災地の市町村における官民災害時応援協定の比較分析

論文概要:

本研究では、南海トラフ地震の想定被災地域として、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県、徳島県、高知県の海に面した市町村の災害時応援協定を対象として、内閣府が構築している「令和元年度災害時応援協定データベース」を用いて協定区分に分類し、地域間比較するために一元配置分散分析および多重比較を行なった。その結果、南海トラフ地震想定被災地の自治体の災害協定において県別に、他地域と比べて多様な種類の災害協定が締結されている分野の特徴を抽出することができ、また、少数ではあるものの他自治体への参考となりそうな協定区分を検討した。さらに、南海トラフ地震の災害対応に関して、官民協定の締結状況を踏まえて、市町村の災害対応として重要な避難・避難所・罹災証明発行業務に絞った考察を行った。加えて、内閣府がとりまとめている災害協定データベースのあり方について、今後他自治体が活用しやすいようなデータベースに改善するための方策について提言した。


No2
著者:

河本 尋子

共著者:

安井 拓哉 重川 希志依

論文タイトル:

コロナ禍における避難への考え・避難先選択の変化とその影響要因に関する分析

論文概要:

本研究では、2021年7月大雨の影響を受けた地域を対象に質問紙調査を実施し、コロナ禍の影響として、新型コロナウイルスの感染リスクに対する危機感と生活変化状況を把握した。また、コロナ流行前後における避難への考えや地震・水害時の避難先選択の変化を把握し、影響する属性要因を明らかにした。  結果から、新型コロナ感染症への危機感により、買物自粛の形で生活様式の変化が体感され、避難への考えの変化にも影響がみられた。  地震・水害での避難先選択では、コロナ前には指定避難所、在宅避難、親戚・知人宅の順に多かったが、コロナ後に指定避難所が減少し、在宅避難、親戚・知人宅、車中泊等が増加した。特に車中泊増加には、健康面の課題が伴う。コロナ後の水害の場合に在宅避難が最多となり、コロナ禍での大雨における実際の選択と重なる。  避難への考え方の変化に影響した属性要因は、年代、職業、居住年数、防災リテラシーであった。特に、50代以下の考えが変化しており、長期居住者や防災リテラシーが低いと考えが変化しないといえる。  地震時の避難先選択の変化には、年齢・世帯主が関連していた。他方、後期高齢者や要介護者との同居、持病有無に関連はみられず、防災リテラシーも同様の結果だった。水害時の避難先選択では、長期居住が選択変化に関連していた。また地震・水害に共通して、中学生との同居が属性要因に挙げられる。


No3
著者:

萩原 由訓

共著者:

論文タイトル:

浸水危険度簡易評価法の研究

論文概要:

それぞれの地点がもともと持っている水害に対する危険度を簡易的に評価するための浸水確率の予測式を統計的な手法を用いて作成した.  まず,東京都の被害履歴データを目的変数,50mメッシュの標高,50mおよび250mメッシュのラプラシアンおよび地形区分から求まる平均S波速度を説明変数としたロジスティック回帰分析を行い浸水確率予測式を作成した.  次に,検証用データを用いて浸水確率を評価した結果でも,予測式作成時の精度と同等な結果が得られた.  最後に,東京都以外の3地域における過去の水害データと予測式による浸水確率評価結果との比較を行った.これらのデータを用いた場合も予測式作成時と同程度以上の評価となることを確認した.


No4
著者:

坂口 奈央

共著者:

論文タイトル:

なぜ三陸の被災者は自然地物を「おらほの遺構」と語るのか ―過程が育てるシンボル性―

論文概要:

東日本大震災の被災当事者は、能動的に「おらほの遺構」と呼ぶ、津波の被害を受けながらも生き残り、時間の経過とともに回復していく自然物がある。彼らは、自然物を被災後観察し、小さな変化を確認すると、他者に語ろうとする。語りを通して彼らは、被災前とは異なる新たな日常を再構築させ、復興への記憶をつくりだしていく。被災の記憶を残すという観点ではなく、つくり育てていく観点から捉え直すことで、初めて、普遍性をもつ社会共有の震災遺構になるのではないか。


No5
著者:

李 泰榮

共著者:

松川杏寧 千葉洋平 永松 伸吾

論文タイトル:

多様な支援実態を踏まえた地域防災ファシリテーション形の改善の試み

論文概要:

本研究では、学識経験者以外の行政職員や災害NPOに着目し、地域の防災課題の発見・解決を支援する活動事例の収集・分析を通じて、地域コミュニティの効果的な防災活動の支援実態を明らかし、ファシリテーションの技術と方法論の基本パターンである「地域防災ファシリテーション形」を軸にした支援実態の具体化を通じて、「支援体制づくり」といった要素を含む、支援主体の多様性を踏まえてより普遍的な説明力を持つ地域防災ファシリテーション型の再構築を試みた。


No6
著者:

磯村 和樹

共著者:

阪本 真由美

論文タイトル:

南海トラフ地震被災想定自治体における災害時に向けた官民連携体制に関する研究 ー 兵庫県南あわじ市の官民災害協定を中心とした事例調査 ー

論文概要:

本研究では、災害時における官民連携の実効性の向上に資する知見を得ることを目的として、南海トラフ地震の被災想定自治体の一つである兵庫県南あわじ市において、災害時の官民連携体制に関する事例研究(ヒアリング調査、文献調査等)を行った。その結果、同市における災害時の官民連携体制の現状と経緯、その有効性の問題点、対策の一端を示すことができた。現状では、一つの自治体とその連携先の一部の調査結果しか示されておらず、今後、より包括的な分析が必要である。


No7
著者:

崔 青林

共著者:

臼田 裕一郎 花島 誠人

論文タイトル:

豪雨災害による局地激甚災害指定の可能性評価 -2021年7月から8月にかけて島根県の被害報を用いた日次解析-

論文概要:

自然災害は,被災地域に住宅や社会基盤,産業などの地域社会の物的資産の損失をもたらす。物的資産の損失の評価は,実態調査に基づく評価が一般的であるといえる。その際に,膨大な数の住宅や事業所の損額額の算定では,地域別の毀損率や坪当たり建築単価など,ある程度の平均値を用いた集計を取り入れた運用がすでになされている。そこで,本研究では,家屋被害の実績値を用いた局地甚災害指定の判定方法を提案した。また,提案方法を用いて,2021年7月から8月にかけて島根県の被害報を用いた島根県下19市町村の日次解析を試みた。島根県下19市町村の得られた解析結果は,と内閣府が公布した島根県下市町村の局地激甚災害指定の見込み情報と比べて約2週間程度の早期判定の可能性が示唆された。


No8
著者:

水野 雅之

共著者:

江幡 弘道 伊東 秀二 名川 良春 波多野 博憲

論文タイトル:

住宅用火災警報器の維持管理に関するアンケート調査

論文概要:

住宅用火災警報器は、消防法により2006年に新築住宅に設置が義務化され、2008~2011年の間に既存住宅にも市町村の火災予防条例に基づいて順次設置が義務づけられた.本稿では,住宅用火災警報器の設置状況も含めた維持管理についてアンケート調査を実施し,次のような結論を得た. ・住警器の設置状況が一部地域において条例で義務設置となっている台所よりも,消防法で義務設置となっている寝室の方が設置率が低いことを把握し,住宅火災における死者発生被害と比較して,寝室の住警器設置率を高める必要性を指摘した. ・住警器の維持管理における点検状況として,半数程度はこれまでに1回も実施したことがないことを把握し,また点検を実施していなかったことで,調査実施時に点検した結果,不具合が発生していた割合が高いことを示し,定期的な点検の必要性を指摘した. ・今後の住警器の更新が普及するための広報戦略としては,行政機関の広報資料は一定層への情報伝達メディアとして確実に機能していることを示すと共に,幅広く情報を周知するためには様々なメディアでの広報が必要であることを指摘した.