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地域安全学会論文集No.30 (電子ジャーナル論文) 2017.3

No1
著者:

金 玟淑

共著者:

佐藤克志,牧 紀男,平田隆行,稲地秀介,岸川 英樹,田中秀宜

論文タイトル:

「地域の営み」の継続に着目した事前復興計画策定手法の構築 ― 和歌山県由良町衣奈での住民参加型ワークショップを通して―

論文概要:

本研究は,少子高齢化・人口減少という社会状況の中,南海トラフ巨大地震による被害が予想される地域において「災害後」の「地域の営み」を継続させるための計画策定手法について検討したものである.本研究では,和歌山県由良町衣奈地区にて住民ワークショップを開催し,まちづくりのための全体目標(将来ビジョン),5つの方針,12の取組みから構成された「衣奈をよくする12の取組み(原案)」を「事前復興計画案」として確定した.本研究はより実効性の高い事前復興計画立案に向けたプロセスについて分析を行ったものである.


No2
著者:

池永 知史

共著者:

郷右近 英臣,目黒 公郎

論文タイトル:

空き家利用による応急仮設住宅制度の実現可能性に関する分析 ―和歌山県を対象としてー

論文概要:

本稿では,南海地震発生時に甚大な被害が予想される和歌山県を対象地として,賃貸市場に出ておらず,人口減少とともに増加している空き家を活用した応急仮設住宅制度の実現可能性について検討した.その結果,(1)これらの空き家の一部は,プレハブの仮設住宅よりも低コストで早期に供給できうること,(2)それらの活用により既存住宅を用いた応急住宅の供給量10%程度増加でき,その効果は地方部において特に効果的であることが分かった.また,アンケート調査の結果,50代以下の世代は,応急仮設住宅の立地よりも居住環境の良さを重視する傾向にあり,彼らの需要に適合したみなし仮設住宅を供給することで,プレハブの仮設住宅への需要を軽減できる可能性があることが示唆された.


No3
著者:

伊勢正

共著者:

磯野猛,臼田裕一郎,藤原広行,矢守克也

論文タイトル:

自治体の多様性を踏まえた災害情報システムのあり方に関する考察

論文概要:

本稿では、全国の災害情報システムの導入状況を整理した上で、主に都道府県によって整備が進められている災害情報システムの問題点として、情報の入力を行う市町村の災害対応ワークフローと都道府県の求める情報の乖離を指摘する。次に、こうした乖離を克服するプロセスとして、システム、活動、体制の3つの要素の再編を伴う再組織化の重要性を示した上で、システムのワークフローや情報デザインを容易に変更できる「自治体向け災害情報利活用システム」を用いた実証実験を行い、再組織化とこれに伴うオーナーシップ醸成の視点から、災害情報システムのあり方について考察する。


No4
著者:

土屋 哲

共著者:

岩田 千加良,谷本 圭志

論文タイトル:

区間重複を考慮した地方都市部道路網の冗長性指標に関する一考察

論文概要:

災害時の道路途絶は救助活動,避難活動,消防活動等に支障をきたし,復旧を遅らせる要因となる.また,迂回路の存在は道路途絶の影響を緩和することから,一定の冗長性をもつ道路ネットワークの形成は災害に強い地域づくりの観点から重要である.本研究では,道路ネットワークの冗長性に関して,これを都市内など比較的狭域のネットワーク冗長性評価に適用することを念頭に,社会ネットワーク分析における中心性概念を援用して,経路の重複区間を考慮しうる冗長性指標を提案する.その上で,実際の適用事例を通じて,既往の指標との比較でその有効性を確認する.


No5
著者:

糸井川 栄一

共著者:

富塚 伸一郎

論文タイトル:

ヘリコプター空中散水による市街地火災時の延焼遅延効果に関する研究

論文概要:

大規模地震が発生した際には,大都市では同時多発火災が発生し,木造密集地域を中心に,消防力を上回る延焼拡大が懸念されている.また,消防車両は建物倒壊による道路閉塞によって,火災地域へのアクセスに困難を伴う.このことからヘリコプターによる空中からの消火活動の必要性がある. 本研究は,火災地域の地域特性とヘリコプターによる空中散水の関係を明らかにするものである.火災工学に基づく数値実験によって,延焼限界距離とヘリコプターによる空中散水の頻度との間に密接な関係があること,ならびに,空中散水の効果がより効果的な市街地条件を明らかにした.


No6
著者:

池田 浩敬

共著者:

木村 謙,和田 聖治,白井くるみ

論文タイトル:

市街地における津波避難先配分の最適化に関する研究 -沼津市第二地区における検討事例-

論文概要:

本研究では,現実の市街地における,1)現状での津波避難ビルの配置,2)各避難ビルの容量,3)各避難ビルまでの津波到達時間,4)市街地における夜間人口分布を前提条件とし,各避難者が津波避難ビルまでの津波到達時間以内に容量に空きが有る避難ビルに避難するか,浸水域の外縁までの津波到達時間内に浸水域外に避難した場合に避難完了と定義し,上記条件で避難が完了しない避難困難者数の最小化及び平均避難時間の最小化を目的関数として,避難者の避難先配分の最適化を行う方法についての提案を行った.


No7
著者:

藤本 一雄

共著者:

坂本 尚史,細川 正清,室井 房治,近藤 伸也

論文タイトル:

自然災害による最悪の事態を回避するための結果事象型イメージトレーニングの提案と実践

論文概要:

本研究では,従来,防災教育・研修の分野で使用されている原因事象型のイメージトレーニング手法を補完することを目的として,結果事象から原因を発見・抽出する手法を防災分野の問題に適用して,個人や小規模の集団などの防災に取り組む各主体にとっての「最悪の結果」を出発点として,その結果に到る原因(弱点)を段階的に考え,その因果関係図から個人・集団の内部・外部環境に潜在する災害に対する弱点を発見するためのイメージトレーニング手法(弱点発見イメージトレーニング)を提案した.さらに,弱点発見イメージトレーニングを大学生,地域住民,ホテル従業員,高校生のグループを対象として実施し,本手法の有効性・問題点を明らかにすることを試みた.


No8
著者:

尾方 寿好

共著者:

久野 健太,北辻 耕司,岡村 雪子,藤丸 郁代

論文タイトル:

大学生における学内消防団への入団決定に影響を与える要因

論文概要:

大学キャンパス内を拠点とする消防団(学内消防団)へ大学生が入団することを決定する際に影響を与える要因を解明することを本研究の目的とした。対象者197名のうち、入団希望者は34名、入団非希望者は163名であった。多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、入団希望・非希望は、「学内消防団活動と学業の両立可能性」「被災経験のある家族の有無」「学内消防団活動の進路への影響」「ボランティア活動経験」の4つの要因と関連していることが判明した。これらの要因を念頭に入れた適切な対策を講じることで、学内消防団への入団希望者を増加させることができると考えられた。


No9
著者:

中林 啓修

共著者:

論文タイトル:

米軍による日本国内での災害救援 -阪神・淡路大震災以降の展開-

論文概要:

本研究は,在日米軍による日本国内の災害への救援(以下,国内災害救援という)について,その背景にある制度やこれまでの経緯を整理することで,自治体と在日米軍との協力を円滑にするための課題を抽出することを目的としている.米軍による災害救援は世界各地で行われてきており,それゆえに米国外での災害救援に関する法律や制度・仕組みも整備されてきた.これらの法制度を前提としつつ,米軍による国内災害救援は阪神・淡路大震災を契機に日米間において制度的な深化を遂げ,日米両政府あるいは自衛隊と米軍との連携のみならず,自治体と米軍との連携も徐々にではあるが進んできた.阪神・淡路大震災直後、米軍による救援は米軍施設の所在地およびその周辺の自治体にとっての関心事にとどまり,政府はどちらかといえば国外の災害救援に主眼を置いていた.しかし,東日本大震災を契機に,政府レベルでも国内で発生した大規模災害での救援活動についての米軍との連携を重視するようになった.他方,自治体レベルでも,必ずしも米軍施設が所在しない自治体であっても,米軍による災害救援の受け入れを視野に入れた取り組みに着手する自治体も散見されるようになってきている.このように、阪神・淡路大震災以降,政府レベルと自治体レベルそれぞれの着目点に沿って進められてきた米軍による国内災害救援についての取り組みは,東日本大震災を契機に共通の目標となって進められているといえる.平成28年熊本地震では,こうした連携強化の流れの中で、来るべき災害を見据えたいわば「実戦テスト」と思われる取り組みも散見された.これらを踏まえて、現時点において指摘できる米軍による国内災害救援の課題は、「救援手続きの明確化」、「二次災害への備えを含む制度の自治体への周知と運用の明確化」、そして「自治体と米軍との直接的な協力枠組みの構築」の3点である。


No10
著者:

佐伯 琢磨

共著者:

清野 純史

論文タイトル:

地震力と津波波力を同一指標で表した損傷度曲線の提案 ―ガソリン供給施設への適用に向けて―

論文概要:

本論文では、今後発生が予想される南海トラフ巨大地震などの広域災害において、懸念されるガソリン等の燃料の供給停滞問題の発生を軽減することを目的とし、対策を立てる際の基となる製油所の被害予測の方法を示す。その予測の初期の段階で、製油所を対象とした被害関数が必要となるが、製油所が立地する沿岸部では、地震動のみならず津波の影響を考慮する必要があるため、地震力と津波波力を同一指標で表した被害関数の検討を行う。


No11
著者:

沖田 陽介

共著者:

論文タイトル:

検定制度を通じた 国際捜索救助枠組みの実効性に関する研究:ニュージーランド地震,東日本大震災,ネパール地震を例に

論文概要:

本稿では、国際捜索救助に関する国連総会決議57/150「国際都市型捜索救助活動の効果と調整機能の強化」の内容が、国際捜索救助実務者間のネットワークであるINSARAG(国際捜索救助諮問グループ)によって、とりわけそのユニークな検定制度IEC(INSARAG外部評価)を通じ、いかに実施されてきたのかを、平時および災害の発生時に分けて考察する。平時においては各国の能力強化、INSARAGガイドラインの遵守などについて、IECは確かに貢献しているものの、災害発生時の国際捜索救助チームの派遣と受け入れの決定については、IEC認定の有無はほとんど考慮されていないことを、近年のアジア太平洋地区を襲った災害(ニュージーランド地震、東日本大震災、ネパール地震)を例に、その理由とともに検証、考察する。加えて、その理由の背景にある災害援助の判断と外交の判断について述べる。


No12
著者:

諫川 輝之

共著者:

大野 隆造,村尾 修

論文タイトル:

東日本大震災体験後における住民の津波避難に関する意識 ―軽微な津波を体験した千葉県御宿町における震災前後のアンケート調査から―

論文概要:

東日本大震災による大津波の経験は、被災地以外の住民にも何らかの意識の変容をもたらしたと考えられる。本研究では、津波が襲来したものの大きな被害は受けなかった千葉県御宿町の沿岸地区住民の避難意識を検討するためにアンケート調査を行なった。筆者らは、同町において震災前にも同様の調査を実施しており、一部の設問について震災前後の比較が可能である。その結果、震災後何らかの防災対策を実施した家庭は多いが高齢者ほど実施率が低いこと、浸水リスクに関する認知傾向に震災前との差異は認められないことなどが明らかになった。


No13
著者:

平山 修久

共著者:

大迫 政浩,林 春男

論文タイトル:

災害初動期における災害廃棄物量の把握システムの構築 −2016年熊本地震でのケーススタディによる−

論文概要:

本研究では,メッシュ法による災害廃棄物量の推定手法を用いて,広く一般に入手可能なセンサスデータと災害直後に入手できる災害情報を用いて,災害初動時での災害廃棄物量を把握することが可能となるシステムを構築した.2016年熊本地震における災害廃棄物量の把握を試み,災害廃棄物量の把握システムを用いることで,災害直後,すなわち,地震発生後半日から1日程度で,ある程度の精度で地域メッシュ別,市町村別に災害廃棄物量を把握することが可能になるといえた.


No14
著者:

北本 裕之

共著者:

生田 英輔,宮野 道雄

論文タイトル:

兵庫県南部地震後の住宅復興過程に関する時系列的研究 神戸市東灘区と淡路市北淡地区の地域比較

論文概要:

本研究では、神戸市東灘区と淡路市北淡地区を事例として、兵庫県南部地震後の住宅復興過程に関する時系列的に検討を行い、それぞれの地域特性が住宅復興に波及してきたかを比較・検討した。建物の建替状況、建物構造、屋根葺き材、用途、形式、階数について検討を行い、地域特性の違いによる住宅復興の差異を明らかにした。


No15
著者:

鈴木 光

共著者:

論文タイトル:

地域の災害リスクの理解を深めるmy減災マッププログラムの効果

論文概要:

クリアファイルとハザードマップ、地図を使い自分で作る減災地図の作成方法を考案し、その防災教育上の効果を検証した。マップ作りの対象は、地域住民、小学校教員、防災リーダー等であり、マップ作りにより身近な地域の潜在的な災害リスクに新たに気づき、イメージを醸成できることがわかった。また新たな気づきがあるほど、備えの行動を誘引することが示された。さらに、小学校で実施した場合は、子供が作ったマップを家庭に持ち帰ることで、マップを作っていない保護者にも地域の潜在的な災害リスクを気づかせることができ、災害時の家族の連絡や対応、備えなどについて話題にするという具体的な行動を引き起こすことができた。これらの結果から“自分で作った持ち帰れる減災マップ”は、地域の災害特性を作った人から身近な他者へその内容を波及させるリスクコミニュケーションツールになり得ることが示唆された。


No16
著者:

伊藤 圭祐

共著者:

立木 茂雄,牧 紀男,佐藤翔輔

論文タイトル:

名取市の復興事業区域における自力再建者の特性に関する研究

論文概要:

復興事業が被災者の生活復興感に与える影響について検証するとともに自力再建できるにもかかわらず復興事業の下で自力再建を考える被災者に焦点を当てその特性を分析した。


No17
著者:

松川 杏寧

共著者:

佐藤 翔輔,立木 茂雄

論文タイトル:

仮設住宅供給方式の選択がすまいの再建に与える影響に関する研究 ―名取市現況調査2年分のデータをもとに―

論文概要:

借り上げ仮設制度はまだ新しく十分に練られているとは言いがたいが,制度化された以上今後様々な被災地で引き続き活用されていく.借り上げ仮設という仮住まい方法が持つ効果や制度の是非について,より研究を進めていくことは急務である.借り上げ仮設住宅という制度は,個人の生活再建にどう影響するのか,その影響をプレハブ仮設と比較しながら見ていく.名取市の2年分のデータを用いてパネルデータとして用い,クロス集計を行って分析する.


No18
著者:

宇田川 真之

共著者:

論文タイトル:

多様な物流施設や民間事業者の特性を勘案した救援物資の供給体制の提案

論文概要:

救援物資の調達・輸配送業務は主要な応急対策業務であるが、必要となる物的・人的資源が行政機関には十分ではないことから、民間事業者と連携が不可欠である。そこで、都道府県から避難所までを対象とした包括的な救援物資の調達・輸配送システム構築にむけた連携の在り方の示すことを目的とした調査を行った。行政機関および流通業界および物流業界双方の企業・団体へのヒアリング調査を行い、物資や物流拠点の種別ごとの留意点等を明らかにし、包括的な観点から効果的な役割分担や資源利用などを整理した。