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地域安全学会論文集No.17 (電子ジャーナル論文) 2012.7

No1
著者:

川崎 勝幸

共著者:

論文タイトル:

東日本大震災における「情報空白」の検証~災害リスクマネージメントの向上に向けて~

論文概要:

本稿では、情報の生成、伝達、認識、実効性の四つの視点から、東日本大震災及び過去の代表的な災害において生じた「情報空白」を整理するとともに、これらの事例を踏まえ、今後、「情報空白」に関するリスクマネージメントを実施していく上でのポイントを整理した。結果として、東日本大震災で生じた「情報空白」の多くは過去の災害でも見られたこと、リスクマネージメント実施の際は、先ず、「情報空白」発生要因の網羅的リストアップが必須であること等を指摘した。


No2
著者:

荒川 昭治

共著者:

片桐 信,西野 智研,大窪 健之

論文タイトル:

木造住宅地域を地震時火災から守るWater Shield Systemに関する基礎的研究-京都市清水寺周辺地域の配水システムの研究-

論文概要:

我が国では,過去の地震時火災によって,木造家屋密集地域において,多くの生命が奪われ,また多大な財産が喪失されてきた.延焼拡大の主要因は,消火能力の減少が考えられる.地震時においては,道路網の寸断により消防の現地への到達が遅れ,また上水道の遮断によりそれに依存した消火用水が確保できない.したがって,一般の住民により容易に操作できる初期消火システムを構築することが重要である.著者らは,地震火災時に十分な避難・救助を行う時間を確保するためのウォーターシールドシステム(WSS)について検討を行ってきた.本論文では,清水地区にWSSを配置するための適切な配水システムの計画・設計法について検討を行った.


No3
著者:

貝辻 正利

共著者:

北後 明彦

論文タイトル:

雑踏事故に至る高密度群集滞留下での群集波動現象に関する研究

論文概要:

雑踏事故直前の超高密度群集滞留下で発生した群集現象の実写映像,雑踏事故調査委員会報告書,高密度群集現象観察結果に基づく高密度群集滞留下で発生する群集現象分析により,雑踏事故発生のメカニズムが明らかとなった.高密度群集滞留下で発生する群集現象は,群集密度概ね8人/㎡に至れば群集内に密度と圧力分布の差異に起因する20cm~60cmの群集波動現象が発生し,群集密度概ね10人/㎡以上に達すれば,群集の恐怖感に起因するパニック現象が加わって複雑な限界群集波動現象に増幅されて雑踏事故至る可能性が高いことが明らかとなった.


No4
著者:

斉藤 容子

共著者:

室崎 益輝

論文タイトル:

ネパール、カトマンズにおける「防災まち歩き」の住民参加ワークショップに関する研究

論文概要:

ネパール, カトマンズ盆地は国の中心地として都市化が進んでおり, 1934年に発生したような大地震が再度この地に発生すれば, 大惨事となることは容易に想像がつく. 本研究は災害に強いコミュニティを形成するためには住民自身が防災活動に参加をし, 自らが検証をしながら具体的に減災活動へとつなげていくことが重要だと考え, ネパールのコミュニティ防災の現状を分析した上で, 住民参加の防災まち歩きワークショップの試行と評価を目的とした. 更にリスクアセスメントマップを啓発看板として利用をする手法を提案した. またその方法が日本国内において適応可能かを考察し, 今後の防災対策の方向性を探った.


No5
著者:

鍬田 泰子

共著者:

岡本 祐

論文タイトル:

東北地方太平洋沖地震における断水長期化要因の解明

論文概要:

東北地方太平洋沖地震は広域に被害をもたらした地震であったが,観測された最大加速度や震度に比べて住家の倒壊率は低く,一般的な振動による構造物被害は少なかった.しかし,被災市町村の断水は長期にわたった.本研究では,広域水道の被害を含めて,東北地方太平洋沖地震における被災自治体の断水長期化の要因を明らかにし,その影響を定量的に評価することを試みた.


No6
著者:

高篠 仁奈

共著者:

論文タイトル:

震災後の食料供給と小規模商店の役割

論文概要:

本研究では,仙台市内を主な対象とし,震災時の食料供給の実態を把握し,小規模商店の営業再開の要因を分析する.震災時の仙台市内では,食料不足に対する危機感があったが,小規模商店が食料供給に重要な役割を果たした.小規模商店の営業再開の要因について,主な分析結果は以下の通りである。1)小規模商店の中でも,従業員数が多く,従業員に占める家族の割合が多いほど早期に営業を再開していたが,性別による構成差は,営業再開に影響がなかった.2)燃料の確保,仙台中央卸売市場への近さが営業再開に重要な影響を与えた.停電やそれに伴う機器の使用停止については,営業再開に与える影響は小さかった.


No7
著者:

多名部 重則

共著者:

東田 光裕,林 春男

論文タイトル:

新型インフルエンザ発生時の経済被害とその対策に関する考察 - 2009年神戸市での事例分析による課題解析 -

論文概要:

本研究では,2009年5月に国内初の新型インフルエンザ(A/H1N1)発生時に生じた神戸市内の観光客の減少と回復プロセスを,マスコミ報道及び集客観光事業といった「社会的対応」との関連について解析を行い,観光客が回復しなかった要因を分析する.まず,新聞報道と観光客増減の解析により,「危機情報は,報道量が少なくても人の行動には大きく影響する.一方で,安心情報は,近隣居住者の行動には影響するが,遠隔地には仮に到達したとしても人の行動に影響を与えるとはいい難い」とする仮説の構築を行う.次に,集客観光事業としての観光施設無料開放が遠距離観光客を呼び込む効果に限界があったことを指摘する.


No8
著者:

川崎 昭如

共著者:

小森 大輔,中村 晋一郎,木口 雅司,沖 一雄,沖 大幹,目黒 公郎,西島 亜佐子

論文タイトル:

2011年タイ洪水における緊急災害対応:政府機関の組織間連携と情報共有に着目して

論文概要:

2011年にタイ王国チャオプラヤ川で発生した広域洪水災害の被害拡大要因の一つとして,政府機関の災害対応に不備があったことが指摘されている.本稿では,タイ王国の災害対応の強化に資することを目的に,組織間連携と情報共有に着目して,タイ政府およびバンコク都の緊急災害対応の全体像を整理し,緊急対応の成果と課題を検討した.はじめに,チャオプラヤ川洪水の拡大過程と被害状況を概括し,次に,ヒアリング調査から得られた情報をもとに,タイ政府の災害対策本部およびバンコク都の水害緊急対応センターの災害対応の状況,そして復興管理システムについて整理した.さいごに,今後の防災対策の向上に向けて検討すべき課題を提示した.


No9
著者:

竹葉 勝重

共著者:

大西 一嘉,姜 信旭

論文タイトル:

地震時室内安全対策推進のための実践的研究-神戸市須磨区竜が台地区における民生委員と連携した活動を通じて-

論文概要:

本研究は,地震時の室内安全対策である家具固定が思うように広く普及しない現状から,家具固定の普及を促進するためにはどのような施策が必要であるかを研究した.4軒の高齢者宅を訪問しヒアリング調査及び家具等の配置から室内安全状況を分析、室内安全対策を提案、家具固定工事、フォローアップ調査の一連の作業から,家具固定普及のための実践的・社会的な課題を明らかにした.そして,室内安全対策向上に寄与することを目的に家具固定措置の器具や手法を簡便に選択する手順を確立し,家具固定の普及のための方策を明らかにした.


No10
著者:

倉田 和己

共著者:

福和 伸夫,護 雅史,飛田 潤

論文タイトル:

強震動データの活用と説明力向上により利用者の想像力を喚起し耐震化を誘導するための建物応答シミュレーションソフトウェア開発

論文概要:

強震動データの活用と説明力向上のため、建物応答シミュレーションと計算結果のアニメーションを行うソフトウェアの開発を行った。強震動波形をデータベース化し、Webマップインターフェースから利用できるようにすることで利便性を高めている。Webブラウザの他にヘッドマウントディスプレイ、マルチスクリーンのプロジェクター、スマートフォンなど各種のデバイスを活用し、没入感を高めている。一般市民の地震の揺れに対する想像力を喚起し、意識を高めることを目的としている。


No11
著者:

石川 哲也

共著者:

川崎 昭如,目黒 公郎

論文タイトル:

山陰地方豪雪災害時のTwitterユーザによる情報発信行動の分析

論文概要:

大規模災害時にソーシャルメディア等のICT技術を活用して,一般市民が直面する問題を解決しようとする動きが大きくなっている.ソーシャルメディアを災害時に有効活用するためには,1)ソーシャルメディアから収集できる情報による災害状況把握の精度や偏りの特性,2)情報発信を行うユーザの特性,3)情報提供に対する細かな要求に対するコミュニティ全体の対応性の把握が必要であるが,これらの課題に関する十分な検討は行われていない.そこで本研究では,2011年の山陰地方豪雪を対象に,災害情報の共有を目的としたTwitterコミュニティに投稿された情報に対して分析を行い,ソーシャルメディアの災害時利用の可能性を検討した.


No12
著者:

小檜山 雅之

共著者:

系野 智奈美,園部 隆夫

論文タイトル:

千葉市美浜区における液状化被害を受けた住民への健康障害とリスクコミュニケーションに関するヒアリング調査

論文概要:

2011年東北地方太平洋沖地震では液状化により戸建住宅が傾斜する被害が多く生じ,健康障害を訴える住民も多数あった。2011年8月に千葉市美浜区役所で行われた液状化被害を受けた戸建住宅の改修に関する相談会で,地震被害,健康被害等について調査を行った。自治体の罹災証明発行のための調査による傾斜角を説明変数とする健康障害の発生確率モデルを評価した。傾斜角が増すと次第に健康障害を訴える人が増えることが確認され,得られた対数プロビットモデルから,中央値約0.013 radを超えると健康障害の発生確率が50%を超えることが明らかとなった。


No13
著者:

永松 伸吾

共著者:

佐藤 主光,宮崎 毅

論文タイトル:

国民の防災・減災政策選好における将来世代の地位~持続可能な防災・減災政策の構築に向けて~

論文概要:

低頻度高被害型の災害リスクへの対処が、今日の我が国の防災・減災政策の主要な課題の一つである。本稿では、持続可能性をキーワードにした新しい防災・減災政策の方法論を示すため、巨大災害対策の世代間公平の観点からのアンケート調査を実施し分析を行った。