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地域安全学会論文集No.28 (電子ジャーナル論文) 2016.3

No1
著者:

上田 遼

共著者:

論文タイトル:

災害後の人口移動の空間相互作用が復興に及ぼす影響 -兵庫県南部地震を対象とした分析-

論文概要:

災害後の人口回復の地域差には、人口移動の経験則である空間相互作用が影響を及ぼすと予想される。本研究は災害後の人口移動の挙動の理解を目的とし、兵庫県南部地震を対象として、重力モデルによる分析を行った。その結果、大阪を中心とする大都市圏から神戸市各区への人口転入が大都市からの距離に従って逓減すること、人口回復の地域差に有意な影響を及ぼしていることを示した。人口回復の地域差は大都市一極集中型の構造によって生じると考えられることから、モデルによる数値実験を行った。復興格差を低減し、回復の弾力性を高めるためには、中核となる複数の都市が規模(重力)の一定の均衡を保つことが重要であることが示唆された。


No2
著者:

斉藤 容子

共著者:

村田 昌彦

論文タイトル:

地域防災計画と関連計画における男女共同参画視点の具体化とその課題 -兵庫県内市町の地域防災計画見直し状況と三木市における取組みの一考察-

論文概要:

東日本大震災以降、多くの自治体において地域防災計画の修正が進められている。中でも見過ごされてきた課題のひとつとして男女共同参画の視点が認識されるようになった。本論文は兵庫県内41市町において地域防災計画の修正状況を把握し、男女共同参画の視点がいかに取り入れられているかについてアンケート調査がなされた。その結果から防災会議委員に女性がもっとも入っていた兵庫県三木市を事例として男女共同参画に配慮した地域防災計画の修正プロセスに着目した。本論文ではすべての自治体において男女共同参画の視点の重要性が認識されてきたことは明らかとなったが、よりその修正プロセスが重要であることを結論ずけている。また国や県においての上位計画が市町へ推進するためには重要であることを強調している。


No3
著者:

木梨 真知子

共著者:

森田 哲夫, 塚田 伸也, 猪八重 拓郎

論文タイトル:

景観形成方策に対する住民評価からみた景観性と防犯性の関係:群馬県前橋市広瀬川河畔地区における事例研究

論文概要:

本研究は,群馬県前橋市の広瀬川河畔地区を事例とし,住民評価に基づく景観性と防犯性の関係を明らかにすることで,その両立を実現する景観形成方策を検討することを目的とする.良好な景観形成を推進するための10方策について,住民アンケートから景観性および防犯性確保の観点からみた評価をそれぞれ求め,両者の関係性を分析した.さらに感度分析を通して評価基準の将来変化を考慮した方策の最適案を検討した.その結果,景観性と防犯性が両立関係にある方策として既存の景観をそのまま生かした取り組みが選定される傾向にあり,また非両立関係にある方策として間接的かつ一方向的な方策が選定される傾向が示された.


No4
著者:

川崎 昭如

共著者:

市原 裕之, 落井 康裕, 小高 暁, Win Win Zin, Zin Mar Lar Tin San

論文タイトル:

2015年ミャンマー水害に対する政府の対応と河川管理施設および水路の洪水対策機能:バゴー川流域における実態調査

論文概要:

2015年7月から8月にかけて、ミャンマー全土で広範かつ深刻な被害を及ぼした水害に対するミャンマー政府の対応とバゴー川流域を対象とした河川施設の運用に関する調査を行った。その結果、ミャンマー政府が、緊急対応センターを中心として、2013年制定の災害対策法に基づいた防災行動を進めていることが確認できた。また、地方レベルでは部局を超えた情報共有や住民への情報提供の試みなど、以前は見られなかった災害対応の体制を構築しつつあることが分かった。特に2011年に大洪水を経験したバゴー川流域では、その後の大幅な河川改修を実施するなど、ソフトとハードの両面から水害の削減に取り組んでいることが確認できた。


No5
著者:

清水 智

共著者:

若浦 雅嗣

論文タイトル:

津波浸水深の経験的予測手法

論文概要:

本稿では、必要最小限の情報から浸水状況の概況を簡便に把握することを目的とし、東北地方太平洋沖地震の津波痕跡調査結果に基づいた津波浸水深の経験的予測手法を開発した。開発した予測式は過去発生した地震の浸水状況と比較し、その妥当性について確認した。加えて、南海トラフ巨大地震の津波シミュレーション結果とも比較し、課題について考察した。


No6
著者:

岡田 尚子

共著者:

大西 一嘉

論文タイトル:

2014広島土砂災害における福祉避難所等の受入状況と課題

論文概要:

本研究は,2014広島土砂災害において,開設された福祉避難所及び二次避難所等に関して,その開設経緯や,福祉避難所等の利用者がどのように選ばれたかについての全体像を,行政や受入にあたった施設の関係者等へのヒアリングを基に明らかにした.その結果,以下の3点を課題として得た. ①福祉避難空間のニーズは増大しており,今回活用された民間施設を今後も利用出来る体制の整備が必要. ②スクリーニングを担うコーディネーターについて,ケアマネージャー以外に多様な専門職種との協働が必要. ③福祉避難所受入にあたり,必要経費請求事務に関わり,施設側が負担に感じていた不慣れな作業を軽減する支援措置等が必要.


No7
著者:

サンドラ・カラスコ

共著者:

落合 知帆, 岡崎 健二

論文タイトル:

Influence of Housing Designs on Resident-Initiated Housing Modifications in Resettlement Sites in Cagayan de Oro, Philippines

論文概要:

2011年12月にフィリピン南域で発生した大型台風ワシは、ミンダナオ島の都市カガヤン・デ・オロを直撃した。被災者に対して、仲介業者が住宅の提供を行う、大規模な再定住計画が行われたが、その設計・建設のアプローチは、居住者たちの介入の余地のない、極めてトップダウン的なものであった。提供された住宅と、居住者たちの生活習慣や欲求との間には不一致があり、彼らは居住開始後、しばしば自ら改築を行っている。本研究の目的は、再定住計画と居住者たちの改築との間の相互関係を分析し、住宅設計が、居住者主体の改築の促進・抑制に及ぼした影響を明らかにすることである。


No8
著者:

丸谷 浩明

共著者:

寅屋敷 哲也

論文タイトル:

東日本大震災の被災中小企業ヒアリングで把握された事業継続の必要要素と復興制度の事業継続面での課題

論文概要:

東日本大地震は,企業の事業継続計画(BCP)の有効性が問われる契機となった.著者らは、早期復旧を実現した大震災の被災企業にヒアリング調査を実施し,その結果、BCPの有無にかかわらず、経営者が取引先の許容時間を認識し,代替拠点を想定し,早急に行動することが事業継続の実現のために必要であることを把握した.また,従業員は、どの資源が担当事業の継続に必要かを理解し、復旧のため自発的に行動することが期待される.一方、BCP文書は,従業員が習熟できてこそ有効であり,文書自体は簡潔なものがよいとみられる.政府の復旧・復興制度は,企業の事業継続の視点から一部の見直しが必要である.


No9
著者:

寅屋敷 哲也

共著者:

丸谷 浩明, 妹尾 雄介, 積 潤一

論文タイトル:

東北地方の各県における東日本大震災の教訓を活かした官民災害協定の拡充に関する分析

論文概要:

本研究では,東日本大震災の主な被災地である東北地方の県を対象として,官民災害協定の締結状況を分析した.まず,地域横断的に正確な比較を可能とするために,防災基本計画の章や節に基づいて,97の協定の区分に分類した.次に,その協定の区分を用いて,震災前から協定を締結している県が多いものや震災前後の変化が大きいものについて整理した.最後に,震災後の東北地方の県における協定の拡充と震災の教訓との対応関係を分析し,教訓は協定の拡大の主要な要素の1つとなっていることを考察した.


No10
著者:

河野 文昭

共著者:

中村 仁

論文タイトル:

大地震発生時における鉄道利用者の駅周辺での一時避難に関する研究 ―東京都の密集市街地の私鉄鉄道駅を事例として―

論文概要:

電車移動中に大地震が発生した際、鉄道利用者が降車駅周辺の情報が乏しい状況で避難することが予想される。現状では密集市街地の火災延焼からの避難が十分考慮されておらず、一時的な避難場所に避難した後に広域避難場所に避難することも考慮する必要がある。本論文では東京都の密集市街地の私鉄鉄道駅において、鉄道利用者を対象として大地震発生時の避難の可能性と課題を検討する。3地区の事例調査の結果、一律的な対応ではなく、利用者数や駅周辺の状況に応じて、避難ルートや避難場所の対応を個々に検討する必要があることがわかった。


No11
著者:

齋竹 良介

共著者:

荒井 幸代

論文タイトル:

リアルタイム情報を利用した水道管被害箇所の逐次推定

論文概要:

本研究では地震直後に時々刻々と明らかになる被害データを用いた逐次的な被害推定法を提案する。具体的には水道管路をネットワークとみなし,被害箇所を中心とした面的な被害の広がり具合を推定する指標であるコミュニティ濃度を用いて,被害の有無をパターン分類によって識別する。東日本大震災時の仙台市といわき市の水道管故障に関するデータに対する推定精度について既存の代表的な被害予測式を適用した場合に比べて,提案法が優れていることを確かめた。


No12
著者:

岩原 廣彦

共著者:

白木 渡, 井面仁志, 高橋亨輔, 磯打千雅子, 松尾裕治

論文タイトル:

南海トラフ地震災害復旧拠点における地域継続力向上の課題と施策

論文概要:

This study summarize issues and propose measures to improve the regional continuing force in disaster recovery bases in the Nankai Trough earthquake. When the Nankai Trough earthquake occurs, cabinet office will set up an emergency headquarter in Kagawa Prefecture of Shikoku.Therefore, Kagawa Prefecture has a role of disaster prevention base to support restoration in Shikoku. However, the cooperation relations of municipalities are not built enough in activities for giving support at the time of disaster. In this study, we discuss issues and measures to improve the regional continuing force in Kagawa Prefecture from the viewpoint of business continuity plan and district continuity plan.


No13
著者:

永田 俊光

共著者:

木村 玲欧

論文タイトル:

竜巻被災校の教訓をもとにした竜巻防災教育プログラムの開発と被災地外への展開の試み

論文概要:

本研究では,栃木県・埼玉県で発生した竜巻災害における被災学校の被害・対応の実態から,インストラクショナル・デザインのアディープロセスに従って,子どもたちの「生きる力」を高めるための竜巻防災教育プログラムを開発した上で,被災学校および被災していない学校で実践し,他地域への展開可能性について検証を行ったものである.具体的には,1)自然現象としての竜巻や前兆現象を理解した上で,竜巻接近時の対応行動を学ぶこと,2)竜巻発生を正しく認知した時に適切に判断をして迅速に行動するという「竜巻災害への行動のパッケージ化」を学ぶことを目的とした,竜巻防災教育プログラムを開発した.


No14
著者:

三宅 英知

共著者:

林 春男, 鈴木 進吾, 古橋 勝也

論文タイトル:

災害対応経験を活用したタイムライン策定手法の提案-平成25年台風第18号の際の地域における対応を事例として-

論文概要:

当研究では,災害対応経験を活用してタイムラインを策定・改善する手法を提案した.京都府舞鶴市岡田中地域において,平成25年台風第18号への対応活動を元として,この手法の検証を行い,対応計画及びタイムラインを策定した.災害対応において連携すべき内容や行動の判断に必要な情報、対応計画の活動内容が補完されることが明らかとなった.タイムラインは地域ごとに検討を進めることが重要であると考えられる.また,注意を要すると考えられている雨量・水位について,地域における迅速・節約ヒューリスティックスであることが示唆された.これらを活用することで,より効果的に災害対応のマネジメントを行う事が可能となると考えられる.


No15
著者:

阪本 真由美

共著者:

田所 敬一, 高木 朗充, 臼田 裕一郎, 宇井 忠英,

論文タイトル:

御嶽山に関する住民意識調査から考察する災害情報の伝達

論文概要:

2014年9月27日に,御嶽山で水蒸気爆発が発生した.噴火は,登山者が多い状況で発生し,突然の噴火に巻き込まれ,死者57名・行方不明者6名,負傷者69名という人的被害をもたらした.御嶽山は,活火山として常時観測されている山でありながら,なぜ被害を防ぐことができなかったのか.その理由として考えられるのが,火山を観測するとともに情報を発信する気象庁・研究機関と,情報の受け手となる行政・地域住民のリスク認識の相違である.本研究では,災害リスク認識に着目し,火山噴火をめぐるリスク認識について,御嶽山の麓に住む住民の意識調査に基づき検討する.


No16
著者:

村上 ひとみ

共著者:

脇浜 貴志, 小山 真紀, 奥村 与志弘,

論文タイトル:

津波避難における移動手段と自転車活用に関する研究―南海トラフ地震に備える愛知県田原市の訓練事例―

論文概要:

本研究では避難における移動手段選択要因と自転車活用の効用を明らかにするため、南海トラフ地震に備える愛知県田原市の避難訓練についてアンケート調査、セーフティラインの動画測定、GPSロガー測定を行った。徒歩に比べて自転車の速度は早く、偏差が小さいこと、目標時間の15分に間に合う割合が高くなることが明らかになった。実地震時の車避難必要性は、避難距離の長い地区で高いが、自転車利用率が高い地区ではやや低い。GPSロガーの距離、所用時間より、平均速度は徒歩91m/s、自転車146m/sとなった。GISのネットワークアナリストによる15分避難可能ポリゴン作成により、自転車の効用が示された。